コラム
こんにちは、ヒロマリです!
今回は中医学診断の四診(望・聞・問・切)の望診の一つ『舌診(ぜつしん)』についてお話ししたいと思います。
『舌診』は長い歴史を持っている診断法です。
舌を見て病気を判断することは、有名な古典医書である“黄帝内経(こうていだいけい)”や“傷寒論(しょうかんろん)”にすでに記載されています。“黄帝内経”は前漢時代、“傷寒論”は後漢末期から三国時代に編纂されているので、古人は凄いな~と感心するばかりです。
前漢、後漢、三国時代は、日本でいうと弥生時代なんですよね(*_*)
それでは『舌診』について中医学の観点から詳しくみていきましょう。
舌の粘膜は薄くて透明で、血が充分にあふれており、舌の表面にある舌乳頭は変化に敏感で、舌が経絡気血を通して臓腑と密接に関連していることから『舌診』は弁証の中で重要な位置を占めてきました。
舌象(舌の状態)は“舌質”と“舌苔”で診ます。
“舌質”は舌の色や形、動きから正気の虚実と邪気の性質を反映し、“舌苔”は舌苔の質と色から邪気の深浅と胃気があるかないかを反映します。苔は胃に気(エネルギー)と陰(潤い)があると生え、消化機能を表しています。消化機能が弱くなると、苔が厚くなってきます。
舌を舌尖(舌の先)、舌中(舌の中央)、舌辺(舌の左右の両側)、舌根(舌の奥)の4つの部位に分け、舌尖は心肺、舌中は脾胃、舌辺は肝胆、舌根は腎を反映しています。
つまり、『舌診』から気・血・津液や心・肺・肝・胆・腎・脾胃などの内臓の状態、体質までわかります。中国の臨床経験豊富な中医師の先生は、舌を見ただけで患者さんの体質や生活習慣、病名、原因、経過までわかるそうです。
ここで、臨床でよく見られる代表的な舌象をご紹介します。
≪健康な人≫
舌の色は薄いピンク色で、苔はうっすらと白く適度に潤っている。大きさや厚みも程よく、動きも柔らかい。
<舌の色>
淡紅 | 健康 | きれいなピンク色。 |
淡白 | 気虚・血虚 | 通常より淡い、全然血色がない。 |
紅 | 実熱・虚熱 | 鮮紅色:実熱、暗紅色:虚熱。 |
紫、青紫 | 瘀血 | 黒い点やシミあり。舌裏の静脈が拡張している。 |
痩薄(そうはく) | 気虚・血虚、陰虚 | 通常より薄く瘦せている。舌の色が淡白だと気虚・血虚、紅色だと陰虚。 |
胖大(はんだい) | 気虚・陽虚・水滞、湿熱 | 通常より大きくて腫れぼったい。舌の色が淡白だと気虚・陽虚・水滞、紅色だと湿熱。 |
歯痕(しこん) | 脾虚・気虚 | 舌の周辺に左右対称に歯形がついている。 |
裂紋(れつもん) | 気虚・血虚、陰虚 | 舌の表面に亀裂が入っている。舌の色が淡白だと気虚・血虚、紅色だと陰虚。 |
点刺(てんし) | 舌尖:心熱、舌中:胃熱、舌辺:肝熱 | 舌の表面に隆起している赤、白、黒の点で、トゲのように突き刺さる感じがある。 |
顫動(せんどう) | 気血両虚、肝風内動 | 舌が震えて止まらない状態。 |
歪斜(わいしゃ) | 肝風内動、中風(脳卒中)、中風の前兆 | 舌を出した時に左右どちらかに歪んでいる状態。 |
弄舌(ろうぜつ) | 心熱、胃熱、中風の前兆、小児の発達遅れ | 口の中で絶えず舌を動かしたり、唇を繰り返し舐める状態。 |
吐舌(とぜつ) | 脾陽虚 | 舌を口から出したままで、口の中に戻す力がない状態。 |
薄苔(はくたい) | 正常、虚証 | 苔が少ない。 |
厚苔(こうたい) | 邪盛 | 苔が厚く、邪が裏に入ってしまっている。 |
剥苔(はくたい) | 気虚・血虚、陰虚 | 苔の一部が剝がれ落ちている。 |
無苔(むたい) | 重度な気虚・血虚、陰虚 | 苔がなく光って見える。胃の気・陰が損なわれている。 |
燥苔(そうたい) | 陰虚 | 乾燥していて潤いがない。 |
滑苔(かつたい) | 水滞 | 水分が多すぎて、湿度が高く滑る感じがある。 |
腐苔(ふたい) | 食積、痰濁 | 顆粒のように粗くて厚い、滓のように積もっている。 |
膩苔(じたい) | 湿濁、痰飲、湿熱 | 細かく緻密で拭いても取れない、剃っても落ちない。 |
白苔(はくたい) | 寒証 | 病状が進むと白➜黄➜灰➜黒苔になる。 |
黄苔(おうたい) | 熱証 | 体に熱がこもっている。色が濃いほど症状は重い。 |
灰・黒苔(はい・こくたい) | 裏証 | 病邪がかなり盛ん。 |